猫種の多様性はその数だけでなく、それぞれの特徴にも表れています。
今回は、その中でも特にユニークな猫種である「シンガプーラ」について詳しく紹介します。

シンガプーラのの歴史と起源

シンガプーラ猫の起源と歴史は、1974年にシンガポールで始まりました。
この時期、シンガポールに赴任していたアメリカ人のメドゥ夫妻が、街角でセピア色の小さな猫を見つけました。
この猫たちはアビシニアンに似ていましたが、その小ささが特徴で、夫妻は彼らに魅了されました。
1975年に、メドゥ夫妻はこの猫たちをアメリカに連れて帰り、「シンガプーラ」と名付け、繁殖を開始しました。
この名前はマレー語で「ライオンシティ」を意味し、シンガポールの別名に由来しています。
シンガプーラは世界の家猫の中でも最も小さく、成猫のメスは2キロ程度しかありません。
その小ささから「小さな妖精」とも呼ばれますが、野生時代には魚を捕食し、雨天時には配水管で過ごしていたため、「ドレインキャット」(下水猫)とも呼ばれていました。
1988年には、CFA(Cat Fanciers’ Association)によって公認されました。
そして、近年では地元シンガポールで観光マスコットとして認定され、「Kucinta」という愛称で親しまれています。この愛称はマレー語で「愛する猫」を意味します。
シンガプーラはその後、キャットショーに出展され、1979年に公認を受けました。
その美しい姿と性格から、すぐに人気を集め、多くの猫愛好家の心をつかみました。
現在では、その魅力的な外見と愛情深い性格で、世界中の多くの家庭で愛されています。
シンガポールの街角や市場で野良猫として生活していたシンガプーラは、アメリカに渡った後、その独自の魅力が認識され、繁殖と品種改良が進められ、今日に至っています。
シンガプーラの外見の特徴

毛色、毛質、体型
魅力的な毛色について
シンガプーラ猫は、その独特な毛色で知られています。
彼らの毛色は「セピアアグーティ」と呼ばれ、この一色だけがシンガプーラ猫の特徴です。
この美しい色合いは、温かみのあるアイボリー色を基調とし、その上に濃いブラウン色のティッキングが施されています。ティッキングとは、毛の一本一本に濃淡の色が交互に現れる模様のことを指します。
詳しく見てみると、毛の根元はアイボリー色で、そこから先に向かって濃いブラウン色が現れます。
このティッキングは、シンガプーラ猫の毛全体に均等に分布しており、独特の深みと複雑さを与えています。
腹部に目を向けると、色がより薄くなっているのがわかります。尻尾の先端は濃いブラウン色で、前足の内側にはバーリングと呼ばれる濃色の横縞があります。
シンガプーラ猫の毛色は非常に特徴的で、彼らの小さな体に豊かな色彩を与えています。
セピアアグーティの色合いは、シンガプーラ猫の魅力の一つと言えるでしょう。
彼らの毛色は、見る人を魅了し、多くの猫愛好家から愛されています。
毛質
シンガプーラの毛質は非常に特徴的で、以下のような特性があります:
- 短い毛:
シンガプーラの毛は短いです。これは、シンガプーラが熱帯地方のシンガポール原産であるため、短い毛が適応してきた結果と考えられます。 - シルクのような手触り:
シンガプーラの毛は、シルクのように滑らかで柔らかい手触りが特徴です。これは、シンガプーラの美しい外観を一層引き立てています。 - シングルコート:
シンガプーラの被毛はシングルコートで、これは猫の毛が一種類のみで構成されていることを意味します。シングルコートの猫は、ダブルコート(オーバーコートとアンダーコートの2種類の毛でできているタイプ)の猫より毛の量が少ないため、抜け毛が少ないと言われています。
体型
- 体型:シンガプーラは「セミコビー」という体型をしています。これは、胴が長く、脚も長いが、体は筋肉質で引き締まっている体型を指します。
- 体重:シンガプーラの体重はメスで2kg弱~2.7kg程、オスで2.7kg~3.6kg程度が標準とされています。一般的な猫の平均体重が3.6~4.5kgといわれていますので、かなり小さいことがわかります。
- 体高:体高は約25cmとかなりコンパクトです。
目の色や形状などの顔の特徴
- 目:シンガプーラの目は大きなアーモンド形で、パッチリした印象があります。目の色は生後2ヶ月までは「キトンブルー」と呼ばれる青色ですが、成長と共に目の色が変化し、成猫になるとイエロー (黄色)、カッパー(銅色)、グリーン(緑色)、ヘーゼル(薄い明るめの茶色)などが一般的です。
- 耳:耳は大きく、基部が広く、顔に対して離れ気味に付いています。
- 顔:顔は丸みを帯びて小さく、特に大きな目と耳が印象的です。また、目頭から鼻の両側にチーターラインが入るのも特徴的です。
シンガプーラの性格と行動

性格
シンガプーラは優しく甘えん坊で、好奇心が強い反面やや神経が過敏なところがあるものの、飼い主さんや家族への愛情が細やかな傾向にあるようです。
シンガプーラの性格は非常に特徴的で、以下のような特性があります。
人間が大好き:シンガプーラは甘えん坊な性格で人間が大好きです。飼い主さんをストーカーする子もいるそうです。
好奇心旺盛:好奇心旺盛な反面、神経が過敏な面もあります。飼い主の様々な行動に興味をもってちょっかいを出したり、肩や膝に乗ろうとして読書やパソコンの邪魔をすることもよくあります。
嫉妬心:他の猫やペットに対して嫉妬心が強い傾向があります。「飼い主には自分を1番可愛がってほしい」という気持ちがあるようです。
大人しい:シンガプーラはめったに鳴かない猫としても有名です。元々野生の猫だった事もあり、運動神経はバツグンで活発な面もあるのですが、体の小さな事もあるのか臆病な所もあります。
社交性、活動性、鳴き声の特徴
社交性に関しては、シンガプーラは非常に人懐っこく、飼い主や家族との絆を深く築くことができる猫です。
彼らは人間の言葉を理解するかのように、飼い主の話に耳を傾け、共感を示すことが知られています。
また、その小さな体に似合わず、非常に活動的で遊び好きな性格をしており、家の中で活発に動き回る姿を見せます。
これは、彼らが持つ好奇心旺盛な性格から来るもので、新しいものや環境に対して常に興味を持ち続けるためです。
鳴き声の特徴としては、シンガプーラは比較的静かな猫種であり、その声は小さく控えめです。
これはシンガプーラが内向的であるというわけではなく、単に声が小さいだけで、彼らは非常にコミュニケーションを取ることを好む猫種です。
飼い主とのコミュニケーションを大切にし、愛情表現の一環として鳴くことがあります。
鳴き声が小さいため集合住宅などでも飼いやすいと評価されています。
シンガプーラの飼い方(健康とケア)

シンガプーラは一般的に健康な猫種とされていますが、高温多湿の国が出身地のため、冬の寒さに弱い描種と考えられます。
寒さ・乾燥への対策はしっかりと行い体調管理を徹底してあげてください。
一般的な健康問題と予防策
シンガプーラは一般的に健康な猫種であり、遺伝的な疾患を持っていないとされています。
しかし、以下のような特定の健康問題に注意が必要です:
- ピルビン酸キナーゼ欠損症:
これは遺伝病で、生後2ヶ月から3ヶ月の子猫の時に貧血になることが最初のサインです。
病状が深刻になっていくと、貧血だけでなく食欲不振や鈍い動きが見られます。発症すれば4歳くらいで命を落としてしまうことがあります¹。 - 出産問題:
シンガプーラの雌猫は筋力が弱いことによる陣痛微弱と呼ばれる病態のためにうまく出産できず、帝王切開で子猫が取り出されることがよくあります。
これらの健康問題に対する予防策としては以下のようなことが考えられます:
- ピルビン酸キナーゼ欠損症の予防:
まずは子猫のうちに貧血症状が見られる場合は遺伝子検査と血液検査を行うようにしてください。また、発症を防ぐためには、ストレスを与えないようにすることが重要です。 - 出産問題の予防:
シンガプーラの雌猫を飼っているならば、交配には注意するべきです。
いずれにせよ初めてのヒートがくる前の避妊手術を済ませた方が、後々の子宮蓄膿症のリスクを減らせます。
このように、シンガプーラは一般的に健康な猫種ではありますが、特定の健康問題には注意が必要です。
日常のケア、食事、運動の必要性
- 日常のケア:
シンガプーラは短毛種なので、日頃は頻繁な手入れは必要ありません。しかし、週に1~2回のブラッシングを行うと良いでしょう。
また、月に1度程度の爪切りが必要で、嫌がる場合はトリミングショップや動物病院を利用しましょう。 - 食事:
シンガプーラの一か月のキャットフード消費量の目安は1,2㎏ほどです。
生後半年未満の子猫は少食、偏食が目立ち、食事選びや食事量の管理は念入りさが必要です。
また、高タンパク、タウリンが豊富で、皮膚疾患の予防が期待できる低アレルゲンのフードがおすすめです。 - 運動:
シンガプーラは運動量が多く、毎日10分などと時間を決めて、しっかりと遊んであげる必要があります。
シンガプーラはもともと運動が好きなので、積極的に運動させようと働きかける必要はありませんが、シンガプーラが運動しやすい環境を作ってあげるようにしましょう。
適切な環境の提供
- 運動環境:
シンガプーラは非常に活動的な猫種なので、十分な運動ができる環境を整えてあげましょう。
キャットタワーやキャットステップを活用して、室内に高低差を作り、適切な運動量を確保してください。 - 寝床:
シンケアプーラは神経質で騒がしい場所を好まない猫種のため、満足するまでゆっくり眠れる静かな場所を用意してあげましょう。 - 防寒対策:
シンガプーラは暑さには比較的強いですが、寒さはとても苦手です。
そのため、冬季には適切な防寒対策を行ってください。 - 多頭飼い:
シンガプーラは他の猫やペットに対する嫉妬心が強い傾向があるため、多頭飼いには向いていないといえそうです。 - 家電などに注意:
シンガプーラは好奇心が旺盛なので、電気のコードや触られたくないものに対しては注意が必要です。
シンガプーラは活発で遊び好きな猫種で、高い場所に登るのが好きです。
人懐っこく、飼い主に対する愛情が深いですが、繊細で神経質な面もあり、静かで安定した環境が必要です。
シンガプーラとの生活は楽しく、愛情深いものになりますが、彼らのニーズに注意を払い、愛情を持って接することが大切です。
シンガプーラ猫との生活

シンガプーラとの生活は、その小さな体と愛らしい性格で、多くの猫好きから愛されています。
ただし、飼う前にはその性格や飼い方を理解し、適切なケアができる環境を提供できることが重要です。
猫との日常生活の楽しみ方
シンガプーラとの生活を最大限に楽しむためには、彼らの特性を理解し、それに合わせた環境を整えることが重要です。
シンガプーラは遊び好きで活発な猫種なので、毎日一定の時間を遊びに充て、猫じゃらしやボールなどのおもちゃで一緒に遊ぶことが大切です。ま
た、彼らは高いところに登るのが好きなので、キャットタワーや棚を設置して、運動と探検の機会を提供することもおすすめです。
好奇心旺盛なシンガプーラには、定期的に新しいおもちゃを提供して、飽きさせないようにしましょう。
これらのポイントを心がけることで、シンガプーラとの日々はより充実し、楽しいものになるでしょう。
彼らとの絆を深め、共に成長していく喜びを感じてください。
シンガプーラとの生活は、彼らの愛らしさと賢さで、毎日が新鮮で楽しいものになるはずです。🐾
シンガプーラを家族として迎える際の注意点
シンガプーラを家族として迎える時には際の以下の点に注意しましょう。
- 多頭飼い:
シンガプーラは他の猫やペットに対する嫉妬心が強い傾向があるため、多頭飼いには向いていないといえそうです。
もし多頭飼いを考えている場合は、猫同士の性格の相性を見極めることが重要です。 - 寒さ対策:
シンガプーラは暑さには比較的強いですが、寒さはとても苦手です。
そのため、冬季には適切な防寒対策を行ってください。 - 運動環境:
シンガプーラは非常に活動的な猫種なので、十分な運動ができる環境を整えてあげましょう。
キャットタワーやキャットステップを活用して、室内に高低差を作り、適切な運動量を確保してください。 - ストレス管理:
シンガプーラは孤独が苦手で、孤独な時間が長ければ長いほどストレスを溜めてしまいがちです。
ストレスは皮膚病やその他の病気の原因となり得るため、可能な限り孤独な時間を作らないようにしつつ、一緒にいられる時間は遊んであげるなどしてあげるとよいでしょう⁵。

よくある質問(FAQ)

猫種に関する一般的な疑問への回答
Q.シンガプーラの起源や歴史について教えてください。
シンガプーラは、シンガポール原産の小さな体格を持つ猫種で、世界で最も小さな猫の一つとして知られています。その起源ははっきりとしていませんが、1980年代初頭にアメリカに持ち込まれるまで、シンガポールの街角や市場で野良猫として生活していたとされています。アメリカに渡った後、その独特な魅力が認められ、繁殖と品種改良が進められました。
Q.シンガプーラはどのような環境で育つのが最適ですか?
シンガプーラは静かな環境を好む性質があります。また、神経質で寒さに弱いため、暖房設備や水分補給、温度を一定に暖かく保つなど、しっかりと寒さ対策を行ない住み心地の良い環境を作るようにしましょう。
Q.シンガプーラの性格や行動パターンについて詳しく教えてください。
シンガプーラは人間が大好きで、甘えん坊な性格をしています。好奇心旺盛で活発な面もありますが、鳴き声は小さく、ほとんど鳴かないことでも知られています。また、他の猫やペットに対して嫉妬心を持つことがあり、「飼い主には自分を1番可愛がってほしい」という気持ちがあるようです。
Q.シンガプーラの食事や栄養についてはどうすべきですか?
シンガプーラは魚、肉、野菜などを好んで食べます。適切な栄養と適度な運動を提供することは重要です。高タンパクな食事がいいでしょう。
Q.シンガプーラの適切な運動量や遊び方について教えてください。
シンガプーラは運動量が多いので、毎日10分などと時間を決めて、しっかりと遊んであげる必要があります。また、退屈や運動不足にならないようキャットタワーやキャットステップ、猫の関心をひくようなオモチャがオススメです。
Q.シンガプーラの一般的な健康問題やその予防策について教えてください。
シンガプーラは一般的に遺伝的な疾患を持っていないため、健康上の問題は少ないです。ただし、出産も一つの健康問題で、筋力が弱いことによる陣痛微弱と呼ばれる病態のためにうまく出産できず、帝王切開で子猫が取り出されることがよくあります。また、注意が必要な遺伝性の疾患に、ピルビン酸キナーゼ欠損症があります。
Q.シンガプーラの毛皮の手入れやケアについてはどうすべきですか?
シングルコートのため抜け毛は比較的少ないのですが、それでも換毛期にはしっかりと毛が生え変わります。週に3回程度はラバーブラシを使って被毛のケアをしてあげましょう。
Q.シンガプーラは他のペットや子供と一緒に暮らすことができますか?
シンガプーラは、他のペットや子供たちともうまくやっていくことができるため、家族向けのペットとして最適です。ただし、少し神経質な一面も持っている猫です。飼い主に愛情を注いでくれやすい性格も踏まえ、多頭飼いには慎重になるべきでしょう。
Q.シンガプーラの平均寿命はどれくらいですか?
シンガプーラの平均寿命は10~15歳ほどと言われており、猫全体の平均寿命と同じくらいです。
Q.シンガプーラを飼う際の注意点やポイントは何ですか?
シンガプーラは神経質で寒さに弱いため、気温管理を徹底することが重要です。また、好奇心旺盛なので、家電など触られては困るものをいじる事もあります。怪我などしないよう充分に注意しましょう。さらに、ストレスを感じやすく、ストレスが溜まると突発性膀胱炎や脱毛などになってしまいます。落ち着きがなくしょっちゅう鳴いていたり、粗相をしたり、同じ場所を何度も舐めていたりする場合はストレスを感じているサインです。
飼い主が直面する可能性のある問題とその解決策
シンガプーラを飼う際に直面する可能性のある問題とその解決策については以下の通りです:
- 寒さへの対策:
シンガプーラは寒さに弱いため、冬季には適切な防寒対策が必要です。
暖房設備や水分補給、温度を一定に暖かく保つなど、しっかりと寒さ対策を行ない住み心地の良い環境を作るようにしましょう。 - 食事の管理:
シンガプーラは穀物が苦手だったりと消化器の負担になることを考慮して、グレインフリーなど消化しやすいフードを選ぶことも重要です。 - 運動量の確保:
シンガプーラは活発で運動量が多いため、毎日10分などと時間を決めて、しっかりと遊んであげる必要があります。 - 多頭飼い:
シンガプーラは他の猫やペットに対する嫉妬心が強い傾向があるため、多頭飼いには向いていないといえそうです。 - 後悔の可能性:
シンガプーラを飼育することで、特別後悔しやすいことはありません。猫全般にいえる苦労や負担は飼育するうえで当然伴いますが、シンガプーラだからこその後悔はないです。
以上のポイントを踏まえて、シンガプーラとの共同生活を楽しみましょう。
まとめ

シンガプーラはその小さな体格と愛らしい性格から非常に人気のある猫種です。
その魅力は、セピアアグーティという美しい毛色と、シルクのように滑らかな被毛、そしてコンパクトで筋肉質な体型にあります。
また、シンガプーラは人間が大好きで、甘えん坊な性格をしています。
好奇心旺盛で活発な面もありますが、鳴き声は小さく、ほとんど鳴かないことでも知られています。
シンガプーラを家族として迎えることは、その魅力を日々体験できる喜びをもたらします。
彼らは家族と一緒に過ごす時間をとても楽しみ、その愛らしさと魅力で家族を癒してくれます。
シンガプーラは適度な運動と遊びが好きなので、一緒に遊んだり、新しいトリックを教えたりすることで、飼い主との絆を深めることができます。
しかし、シンガプーラを飼う際には、彼らの特性とニーズを理解し、適切なケアを提供することが重要です。
シンガプーラは寒さに弱いため、冬季には適切な防寒対策を行う必要があります。
また、シンガプーラは活発で運動量が多いため、毎日10分などと時間を決めて、しっかりと遊んであげる必要があります。
以上のことを踏まえて、シンガプーラはその魅力と特性から、愛情深く、責任感のある飼い主にとっては最高のパートナーとなるでしょう。
シンガプーラとの生活は、その愛らしさと魅力、そして一緒に過ごす喜びを毎日体験できる、とても特別なものです。
シンガプーラを家族として迎えることを、私たちは心からおすすめします。